透析生活をスムーズに始めるために
透析が始まるまで、そして始まった後の生活をイメージしておきましょう。
血液透析は、血液を1度体の外に出して人工腎臓(血液透析器=ダイアライザ)を通して老廃物や過剰な水分を取り除き、また体の中に戻す治療法です。そこで、血液の「送り出し口」「戻り口」である「シャント※1」をつくるための手術が必要になります。シャントの手術は、体調がよいうちに事前に行っておくと、透析の開始がスムーズになります。
血液透析が始まると、原則的に週に3日間通院して透析を受けることになります。1回の透析には平均4時間程度かかりますが、導入初期にはより短時間ですむ場合もあります。
透析を受けている時間以外は、自由に行動することができます。仕事をされている方は、夜間の透析を行っている施設利用してもよいでしょう。自分らしく、無理のない生活を続けていけるよう、主治医と相談しながらスケジュールを組んでいくことが可能です。
透析を開始した後も引き続き、食事療法や日常生活上の自己管理が重要です。食事療法はこれまでと内容が少し変わり、タンパク質の制限が緩和される反面、水分やカリウムの量にはより注意が必要になります。透析を開始する時期に、主治医や看護師、栄養士などから改めて説明を受けましょう。
※1シャントとは?
血液をダイアライザに送るには、十分な血液量が必要です。そのため、手首などの動脈と静脈を縫い合わせて、血液量が豊富な太い血管をつくる手術を行います。手術は局所麻酔で行われ、一般的には30分〜1時間くらいかかります。利き腕ではない側につくるのが一般的です。
シャントが完成すると、動脈の血液が静脈に流れ込むため、静脈が膨らんできます。手術後1〜2週間ほどで透析に使用できるようになります。
血液透析のねらい
血液透析では、人工腎臓(ダイアライザ)を介して次のようなことが行われます。
1.尿毒を取り除く
腎臓の代わりに、体内に溜まった老廃物(尿毒素)を取り除きます。
2.余分な水分を取り除く
体内の過剰水分を取り除きます。
3.電解質を整える
ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどの血液中の電解質(イオン)を、過剰であれば除去し、不足しているものは透析液から補って、正常なバランスに近づけます。
4.血液pHを調整する
血液が弱アルカリ性になるように、透析液からアルカリ成分を補います。
血液透析の仕組み
シャントから流れ出る血液は、ポンプによって人工腎臓(ダイアライザ)に運ばれます。ダイアライザの内部では、過剰水分の除去、電解質の調整が行われます。
■老廃物や水分を取り除く仕組み
血液中の老廃物は、血液と透析が、半透膜(透析膜)を通して同じ濃度になろうとする「拡散」の原理を利用して取り除かれます。水分は、ストローで吸うのと似た原理で、透析液側に引っ張り出されます。これを「限外ろ過」といいます。